10月7日、水俣・写真家の眼の代表理事 芥川仁らが熊本県庁を訪れ、要望書を提出しました。
要望書
熊本県知事 木村 敬 様
水俣病が公式に確認された1956年5月1日以降、すでに68年もの歳月が流れています。この間、水俣湾を中心とする不知火海沿岸に暮らす多くの人びとが命と健康を奪われ、今日もなお民事訴訟等によって救済と補償を求める被害者の闘いは続いています。
私たち9名の写真家は、1960年から桑原史成が被害者家族の窮状や水俣病の原点とも言われる百間排水口を記録し、その後、塩田武史、宮本成美、アイリーンM.スミス、石川武志、北岡秀郎、小柴一良、芥川仁、田中史子が続き、現在も進行する病状や被害地域の現状を記録し続ける仲間がいます。そこには、謂れのない被害を受けながらも、世界の人びとに自らの病状を知って欲しいとレンズの前に立った患者がいました。精神的にも身体的にも極限の状態で救済と補償を求めて闘う被害者が、自らの姿をレンズの前に晒してくれたこともありました。こうして私たちは水俣病事件を記録し、20万点に及ぶフイルム及びデジタルデータを残すことができました。
今、私たちは、蓄積してきた写真記録を長期に亘って保存し、広く活用することを目指しています。そのことは、日本国内はもちろん世界の人びとにとって、水俣病事件の歴史を理解し、鮮明な記憶として継承されることで、人類の過ちを検証し、くり返さないために役立つことと確信しています。又、私たちに託された役割でもあるのです。
私たち9人の写真家の基本姿勢が、水俣病事件の被害者に寄り添い続けることは変わりませんが、それは必ずしも加害側を攻撃することではなく、被害者が背負う事実を伝え、水俣病事件によって学んだ環境汚染の過ちをくり返さない社会実現の一助になることを願っているためです。熊本県に取って水俣病事件に関わる写真資料を保存、活用する作業は、熊本県民の良好な環境社会の実現を目指す方向であると確信します。
熊本県として、水俣病事件に関連するフイルム、デジタルデータ、プリント等を保存し活用するための仕組み作りを率先して進めて頂きたく、ここに強く要望いたします。
2024年10月7日
一般社団法人 水俣・写真家の眼
代表理事 芥川 仁
理事 小柴一良
理事 桑原史成
理事 塩田弘美
理事 宮本成美
理事 アイリーンM.スミス
理事 石川武志
理事 田中史子
事務局・理事 吉永利夫
写真家遺族 北岡恭子
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